ピアノを自由に弾けなくても、作曲・アレンジ時にはピアノを使うという人は多いと思います。例えばバークリー音大でも、作曲系の学生は専門楽器に関わらず「Basic Keyboard I & II」という科目の単位取得が必須でした。
おそらくはそういった事情からか、多くの楽譜作成ソフトウェアでは、新規ファイルを作成した時のプレイバックにピアノ音色を使っています。
これらの音色はピアニストでなくても気になるところかと思いますので、音源の聴き比べ記事として三つ目となる今回は、Finaleを事例に幾つかのピアノ音源/音色を比較し、その使用上の注意点をまとめてみました。
1.聴き比べ
まずはこちらの動画をご覧ください。事例に使った16小節から成るショパンのプレリュードを、以下のように4小節単位で音色/音源を切り替えてプレイバックしています。
1〜4小節目:Finale同梱のGarritan Instruments for Finale (GIFF)より「Steinway Piano」
5〜8小節目:Finale同梱のGarritan Instruments for Finale (GIFF)より「Concert D Grand Piano」
9〜12小節目:Garritan CFX Lite(¥13,673)
13〜16小節目:Note Performer 4(¥22,374)
2周目:全てGarritan CFX Lite
(1)Steinway Piano
これはFinaleに同梱のGarritan Instruments for Finale (GIFF)の標準ピアノ音色で、Finaleではデフォルトの新規ファイルでも使用される、多くのFinaleユーザーにとって最も聴き慣れた音色の一つかと思います。音色自体はそれほど悪くはないですが、全体的に音が少し軽めな印象を受けます。
(2)Concert D Grand Piano
この音色は元々はGarritan Personal Orchestra 5(GPO5; ¥25,652)での標準ピアノ音源ですが、2016年発売のFinale v25以降でGIFFにも追加され、Finale単体で使用可能となりました。これはスコア・マネージャーを開いて「音色」列から選択可能です。個人的にはSteinway Pianoよりも、低音がより響くConcert D Grand Pianoの方が好みです。
(3)Garritan CFX Lite
Garritan CFX Lite(¥13,673)は英国アビーロード・スタジオで収録されたピアノ音源で、フル・バージョンであるGarritan CFX Concert Grand(¥36,718)からいくつかの音色を抜粋したものです。
これ以上ないのではと思えるくらい音質とマイキングに拘った一方、HDDに133GBの空き領域を必要とし、一般ユーザーにはややオーバースペックかも知れないCFX Concert Grandに比べて、CFX Liteは必要とする空き領域が22GBと小さく、扱いやすいと言えます。
音色のクオリティはSteinway PianoやConcert D Grand Pianoと比べて優れていると感じられ、特に低音域に明らかな違いが聴き取れます。また、様々なピアノ音色を20種類以上搭載している点も見逃せません。
《Windows版のユーザー・インターフェース》
《Mac版のユーザー・インターフェース》
使用上の注意点ですが、基本的にGarritanシリーズ音源や後述のNote PerformerはFinale対応のサウンドマップ・ファイルを持つため、インストールするだけでFinale上ではGIFFと全く同様に操作できるようになりますが、CFX Liteはこのファイルを持たないため、Finaleでは「サウンドマップの優先順位」ダイアログボックスに表示されず、その使用のためには一般のサードパーティ製音源と同様に手動設定が必要となります。
さらにMacの場合は、最新版のFinaleやARIA Playerが現在はUniversal Binaryアプリケーションに進化している一方、CFX Liteは現在もIntelアプリケーションのままでSiliconチップ搭載のMacに非対応のため、通常のサードパーティ製音源の設定方法ではFinale上で使用することができません。
CFX LiteをSilicon Macで使用するためには、まずARIA PlayerにCFX Liteを読み込ませて、そのARIA PlayerをFinaleに読み込ませるという2重の設定が必要です。この設定は多少面倒ですが、慣れれば大したことはありません。(上に載せたスクリーンショットは、CFX LiteをARIA Playerに読み込ませた状態です。)
▼CFX Lite in the ARIA Player
CFX Liteで唯一気になる点は、22GBという決して小さくはないHDD容量※をピアノ音源だけに使うかどうかということでしょう。個人的には、特殊効果を加えた音色は削除して一般的な音色だけを取り上げた10GB程度の「Super Lite」版が欲しいと思いました。
※Finaleに同梱のGarritan Instruments for Finale (GIFF)は8GB弱、GPO5は13GB弱、Note Performerは2GB弱です。
(4)Note Performer 4
Note Performer 4(¥22,374)のピアノ音源も悪くないのですが、初期設定だとリヴァーブが50%と強目に設定されているため、最初の動画の13〜16小節目にあるようにコード・トーンが混ざった濁った響きになってしまいます。
なので、Note Performerでピアノ・ソロ音源を再生する場合は、リヴァーブ量は15%程度まで落とした方が良い結果が得られます。
ピアノ音色だけを比べれば専門音源であるCFXには一歩譲ると感じますが、扱いが簡単で、得意とするオーケストラ曲を始めとしてオールラウンドに使え、容量が軽く、しかも安価というNote Performerの多角的な長所を考えると、このピアノ音色は十分なクオリティかと思います。
2.結論
Finaleを使っている人は、まずは標準音色のSteinway Pianoだけでなく、GPO5から移植されたConcert D Grand Pianoをお試し頂くことをお勧めします。
より本物に近い豊かなピアノ音色を楽しみたいのであれば、Garritan CFX Liteは良い選択だと思います。
これはもちろんFinaleだけでなく、VST音源に対応したSibeliusやDorico、MuseScoreといった他の楽譜作成ソフトウェアでも使用可能で、価格も¥13,673と外部音源としては安価な部類と言えます。
特に、ピアノ譜を頻繁に扱うけど今までは付属音源で済ませていたという人は、ぜひお試し頂ければと思います。
(※本記事に掲載の価格は、2024年4月現在のものです。)
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