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【All】演奏中にロストしても瞬時に復帰し易い譜面を作る

バークリー音大にいた頃、先輩に教えて貰い、後の演奏現場で非常に役立ったことの一つに、楽譜作成ソフトウェアを使ってリードシートやパート譜を自分が読み易いように書き直すノウハウがあります。


楽譜作成ソフトウェアを使うことにより、楽譜のレイアウトを自由に変えることもできます。この機能を活用し、特定の音楽の構造に従って最適なレイアウトを工夫するというのが、その趣旨でした。


事例として、ジャズのジャムセッションでは定番曲の一つである「All The Things You Are」を取り上げてみます。


この曲には半音進行する定番の8小節イントロがあり、テーマを演奏後、再びイントロに戻って終わるというのが一般的な構成です。


  • イントロ:アウフタクト付きの8小節

    • Aセクション:8小節

    • Bセクション:8小節

    • Cセクション:8小節

    • Dセクション:12小節

  • エンディング:イントロと同じ8小節


テーマは8+8+8+12=36小節で、最後のセクションが通常より4小節多い変則的なAABA形式の構造を持つことが特徴です。


市販のリードシートにはリハーサル・マークがないものもあり、曲を全く知らずにリハーサル・マークがないリードシートを使って初見演奏すると、その変則的な構造と相まってロストしてしまうことも少なくない曲でもあるかと思います。


(※ロスト:演奏中に、譜面上でどこを演奏しているのかを見失ってしまうこと。)


A4の紙1枚に収めるために、イントロは少々強引ですが5小節を1段に押し込み、エンディングはイントロと同じなので改めて書かず、ダルセーニョで1小節目に戻す構成とすると、記事冒頭の動画にもある以下のようなリードシートを作ることができます。


しかし、A4の紙1枚に11段を収めると、当然ながら組段の幅は狭くなりますので、各組段を右端まで読んで即座に次の組段の一番左に戻るということを繰り返すうちに、次が何段目かが分からなくなってしまうことがあるかも知れません。この問題は曲のテンポが上がるほど起こり易く、ロストの大きな原因となります。


では、そういったロストをどのように回避するのか。その方法の一つとして、ここでは曲を構成する各セクションをブロック分けし、楽曲構造を明示しつつ、これらを図形的に配置するという譜面の書き方を試してみます。



(1)イントロ、テーマ、エンディングをブロック分けする


まず、演奏時には最初と最後に1回ずつしか見ないイントロとエンディング(Coda)は、36小節のテーマから切り離して配置します。具体的には、イントロ直下とエンディング直上の組段マージンを、他よりも少し大きく取ります。


この「イントロ、テーマ、エンディング」の構造をさらに明確にするために、テーマ部分の組段の左右インデントも、イントロとエンディングの組段よりも少し大きく取ります。


これにより36小節のテーマ部分は独立したブロックとして視認し易くなり、イントロの後はテーマの演奏に集中できるようになります。


また、左右インデントを増やすことで組段の横幅が小さくなり、左右の視線移動の距離も短くすることができます。



(2)テーマを構成する4つのセクションをブロック分けする


36小節のテーマは、さらにABCDの4つのセクションに区分されますが、各セクションを独立したブロックとして視認できるようにレイアウトすることで、ロストするリスクを減らし、また万が一ロストしてもすぐに復帰し易くなります


(※ロストは長時間の演奏による集中力の低下などでやむを得ず発生することもありますが、そうなった場合に瞬時に復帰できることも、実際はより重要と言えます。)


そのための工夫の一つとして、リハーサル・マークを可能な限り左小節線から離して縦1列に配置することで、リハーサル・マークのエリアを小節エリアから分離させます。


さらに、組段セパレータを各セクションの右下に配置することで、個々のセクションをさらにブロック化し、他のセクションと区別し易くします。




最初に示した「全ての組段を均等配置した書き方」に対して、上記(1)(2)のように「楽曲構造を明示した書き方」でレイアウトを調整していくと、例えばこのような譜面を書くことができます。


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今回ご紹介したことはあくまで一つの考え方で、譜面の読み易さを向上させる方法としては、五線の大きさを変えたり、特定の楽譜要素に色を付けたり、あるいは図形で囲んだり矢印を引いたりと、他にも様々なことが考えられます。


そうしたアイデアを得るためには、共演者が手書きでマーキングした譜面を見せて貰ったり、あるいは同じ曲の異なる市販楽譜を見比べるのも有効な方法の一つと思います。


例えば、今回取り上げた「All The Things You Are」のリードシートについては、『THE COLORADO COOKBOOK』が上記の(1)にご紹介したようなイントロとテーマをブロック分けする書き方を採用しています。


なお、レコーディング現場やステージで読み易い譜面づくりのノウハウに関して、かつて櫻井哲夫さんに色々とお話を伺う機会を頂いたことがあります。その時の話はインタビュー記事にまとめていますので、もし宜しければご一読ください。


▼プロのFinaleテンプレートをご紹介 第3回 櫻井哲夫さん(ベーシスト、作編曲家)

『ジャズ/フュージョン/ロックの演奏に特化した楽譜とは』

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