Doricoにおける各種フォントの扱い
- tarokoike

- 11月4日
- 読了時間: 8分
一般に楽譜は、音部記号や臨時記号といったグリフ、タイトルや作曲者名などに用いるテキストなど、多くの記譜要素から成り立っています。
プロ仕様の楽譜作成ソフトウェアでは、それぞれの記譜要素は多様なフォントから選択することができます。
Finaleの場合、音楽フォントは「書類メニュー>記譜用フォントの指定」から設定し、その他のフォントの多くは「ファイル別オプション>フォント」で設定可能で、個別のテキストについては多くの場合、ダブルクリックすれば編集画面を経てフォント設定画面に行き着くことができました。
Doricoの場合、音楽フォントは「ライブラリーメニュー>音楽フォント」から設定します。その他のフォントはFinaleのようにダブルクリックで個別設定が可能なものもありますが、基本的にはライブラリーメニュー内の、「フォントスタイル」「パラグラフスタイル」「文字スタイル」という三つのダイアログで設定することになります。
今回の記事では、Doricoにおけるこれらのダイアログの違いや使い分けについて整理してみたいと思います。
【目次】
1.音楽フォント
2.フォントスタイル
4.文字スタイル

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1.音楽フォント
音楽フォント(Music Font)は音部記号や臨時記号といったグリフのグループを指し、Finale日本語版ではこれは記譜用フォントと呼ばれていました。
例えばFinale英語版はFinale Maestro、Finale日本語版はKousaku、DoricoはBuravuraが初期設定での音楽フォントで、Doricoではライブラリー・メニューの一番上にある「音楽フォント」から、そのプロジェクトで使用する音楽フォントを選択することができます。
この音楽フォントの詳細については、別記事「国内出版譜向けの音楽フォントChaconne EXと、現在流通する主なSMuFLフォントの比較」をご覧下さい。

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2.フォントスタイル・ダイアログ
フォントスタイル・ダイアログは、「ライブラリーメニュー>フォントスタイル」から開くことができます。

Doricoユーザーマニュアルでは、「フォントスタイルを編集 (Edit Font Styles)」ダイアログに関して以下のような説明があります。
「フォントスタイルを編集 (Edit Font Styles)」ダイアログでは、演奏技法、強弱記号、テンポ記号のフォントサイズなど、テキストエディターで編集できないアイテムに使用されているフォントの形式設定を編集できます。」
フォントスタイル・ダイアログは、Finaleで言うところの「ファイル別オプション>フォント」に最も近いかも知れません。そこで設定できる項目とそのフォント設定は以下の通りです。(音楽フォントには薄い赤、Boldには黄色、Italicには緑の網掛けを施しています。)
フォント | サイズ(pt) | スタイル | |
Chord Diagram Fingering Font | Academico | 8.0 | Regular |
オッシアの譜表ラベル | Academico | 7.0 | Regular |
ギターテクニックのフォント | Academico | 7.0 | Bold |
ギターベンドの音程のフォント | Academico | 7.0 | Regular |
グリッサンドラインテキスト用フォント | Academico | 8.0 | Italic |
コードダイアグラムのフレット番号のフォント | Academico | 8.0 | Regular |
コードダイアグラムの水平フレット番号のフォント | Academico | 6.0 | Regular |
コード記号とオンコードの区切り用文字フォント | Academico | 10.0 | Italic |
コード記号のフォント | Academico | 11.0 | Regular |
コード記号の音楽テキスト用フォント | Bravura Text | 11.0 | Regular |
タイムコード用フォント | Academico | 6.0 | Regular |
タブ譜の数字用フォント | Lato | 8.0 | Bold |
デフォルトのテキスト用フォント | Academico | 10.0 | Regular |
デフォルトの音楽テキスト用フォント | Bravura Text | 10.0 | Regular |
デフォルトの音楽フォント | Bravura | 20.0 | Regular |
トリル音程フォント | Academico | 8.0 | Regular |
フィンガリング用イタリックテキストフォント | Academico | 8.0 | Italic |
フィンガリング用テキストフォント | Academico | 8.0 | Regular |
フィンガリング用フォント | Bravura | 20.0 | Regular |
ペダル線のフォント | Academico | 10.0 | Regular |
ページ番号用フォント | Academico | 8.0 | Bold |
ホルンのアルト支管のフィンガリングのテキストフォント | Academico | 7.0 | Italic |
ホルンの支管のフィンガリングのテキストフォント | Academico | 7.0 | Regular |
ホルンの支管のフィンガリングの臨時記号のフォント | Bravura | 7.0 | Regular |
マーカーのタイムコード用フォント | Academico | 8.0 | Regular |
マーカーテキスト用フォント | Academico | 10.0 | Regular |
リピート括弧のフォント | Academico | 10.0 | Regular |
印刷メタデータ用フォント | Academico | 8.0 | Regular |
印刷透かし用フォント | Source Sans Pro | 192.0 | Regular |
垂直線のフォント | Academico | 9.0 | Regular |
小節リピート記号のカウント | Academico | 11.0 | Regular |
強弱に関する音楽テキスト用フォント | Bravura | 20.0 | Regular |
強弱テキスト用フォント | Academico | 10.0 | Italic |
拍子記号用フォント | Bravura | 20.0 | Regular |
拍子記号用プレーンフォント | Academico | 14.0 | Bold |
拍子記号用区切り文字のプレーンフォント | Academico | 24.0 | Regular |
数字付き低音のテキストフォント | Academico | 8.0 | Regular |
数字付き低音のフォント | Bravura | 20.0 | Regular |
横棒線のフォント | Academico | 9.0 | Regular |
演奏技法用フォント | Academico | 11.0 | Regular |
連符のプレーンフォント | Academico | 11.0 | Italic |
連符用フォント | Bravura | 20.0 | Regular |
長休符のタチェット用フォント | Academico | 11.0 | Bold |
長休符の小節数用フォント | Bravura | 20.0 | Regular |
長休符の小節数用プレーンフォント | Academico | 14.0 | Bold |
フォントスタイル・ダイアログでの設定項目は、Doricoのバージョンによっては後述するパラグラフスタイル・ダイアログに所属している場合がありますのでご注意下さい。
例えば曲頭に書かれることが多い「Allegro ♩=140」といったテンポ表記は、Dorico Pro 5から6で以下のような仕様変更が加えられています。※
【Dorico Pro 5】
Allegro:フォントスタイル>即時テンポテキスト用フォント
♩:フォントスタイル>メトロノーム音楽テキスト用フォント
=140:フォントスタイル>メトロノームテキスト用フォント
【Dorico Pro 6】
Allegro:パラグラフスタイル>テンポ(即時)
♩=140:パラグラフスタイル>テンポ(メトロノームマーク)
※ユーザーマニュアルにも、「特定のフォントスタイルが見つからない場合は、パラグラフスタイルである可能性があります」との記述があります。
なお、Finaleの場合、「ファイル別オプション>フォント」にて、音楽フォントをKousakuに設定した状態で例えば休符だけChaconneを用いるといったことが可能でした。Doricoの場合、それは「ライブラリーメニュー>音楽記号」にて設定できます。
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3.パラグラフスタイル・ダイアログ
パラグラフスタイル・ダイアログは、「ライブラリーメニュー>パラグラフスタイル」から開くことができます。

Doricoユーザーマニュアルでは、「パラグラフスタイル (Paragraph Styles)」ダイアログに関して以下のような説明があります。
「パラグラフスタイル (Paragraph Styles)」ダイアログでは、テキストの既存のパラグラフスタイルを変更したり、新しいスタイルを作成したりできます。パラグラフスタイルは、テキストエディターで選択することで、テキストフレーム内の個々のパラグラフや個別のテキストアイテム内のすべてのテキストに対して、あとから適用できます。
フォントスタイル・ダイアログが譜表上に配置される要素を主な対象とするのに対して、パラグラフスタイル・ダイアログはテキストフレーム(テキストボックス)などで独立して配置する要素を主な対象としているように見受けられます。(Boldには黄色、Italicには緑の網掛けを施しています。)
フォント | サイズ | スタイル | |
インストゥルメントの変更ラベル | Academico | 12.0 | Regular |
インストゥルメントの変更通知 | Academico | 12.0 | Regular |
キューラベル | Academico | 8.0 | Regular |
ギャレービューの余白ラベル | Source Sans Pro | 8.0 | Regular |
タイトル | Academico | 20.0 | Regular |
タチェット | Academico | 16.0 | Regular |
テンポ(メトロノームマーク) | Academico | 9.0 | Regular |
テンポ(即時) | Academico | 11.0 | Bold |
テンポ(段階的) | Academico | 11.0 | Bold |
デフォルトのテキスト | Academico | 12.0 | Regular |
ハープペダルセッティング | Academico | 11.0 | Regular |
フロータイトル | Academico | 16.0 | Regular |
プレーヤーグループのラベル | Academico | 10.0 | Regular |
プレーヤーラベル | Academico | 8.0 | Regular |
ヘッダー | Academico | 10.0 | Regular |
ページ番号 | Academico | 10.0 | Regular |
リハーサルマーク | Academico | 14.0 | Bold |
リピートマーカージャンプ | Academico | 11.0 | Bold |
リピートマーカーセクション | Academico | 11.0 | Bold |
リピート回数 | Academico | 11.0 | Bold |
レイアウト名 | Academico | 14.0 | Regular |
作曲者 | Academico | 10.0 | Regular |
作詞者 | Academico | 10.0 | Regular |
小節番号(スコア) | Academico | 9.0 | Italic |
小節番号(パート) | Academico | 9.0 | Italic |
打楽器のレジェンド | Academico | 8.0 | Regular |
数字付き低音タストソロ | Academico | 8.0 | Regular |
歌詞 | Academico | 11.0 | Regular |
歌詞(コーラス) | Academico | 11.0 | Italic |
歌詞(コーラス翻訳) | Academico | 11.0 | Italic |
歌詞(歌詞番号) | Academico | 11.0 | Regular |
歌詞(翻誤) | Academico | 11.0 | Italic |
著作権 | Academico | 8.0 | Regular |
譜表ラベル | Academico | 10.0 | Regular |
譜表ラベル (内) | Academico | 10.0 | Regular |
譜表ラベル (打楽器グリッド) | Academico | 8.0 | Regular |
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4.文字スタイル
文字スタイル・ダイアログは、「ライブラリーメニュー>文字スタイル」から開くことができます。

Doricoユーザーマニュアルでは、「文字スタイル (Character Styles)」ダイアログに関して以下のような説明があります。
「文字スタイル (Character Styles)」ダイアログでは、文字スタイルを変更したり新しいスタイルを作成したりできます。そのあと、テキストエディターでその文字スタイルを選択することで、プロジェクト内のさまざまな場所にある個々の文字や単語にそのスタイルを適用できます。
文字スタイル・ダイアログは、そこで特定の楽譜要素のフォントを設定するというよりも、フォントを何らかの状態に設定したスタイルを登録しておいて、そこから選択することでそのスタイルを簡単に設定するといった使い方をするようです。
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Doricoファミリー製品で優れた点は、廉価版であるDorico Elementsでも、上記で紹介した4つのダイアログについてはProと同じ機能のものが搭載されていることです。※
思えばFinaleファミリー製品の場合、廉価版のPrintMusicではフォント選択に殆ど自由度がありませんでした。これは、初めて購入する楽譜作成ソフトウェアとしてDorico Elementsがお勧めな理由の一つと言えます。
※無料版のDorico SEではさすがにフォント/パラグラフ/文字スタイルの3つのダイアログはありませんが、それでも音楽フォントだけはProと同じダイアログが搭載されています。

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