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Doricoにおける各種フォントの扱い

一般に楽譜は、音部記号や臨時記号といったグリフ、タイトルや作曲者名などに用いるテキストなど、多くの記譜要素から成り立っています。


プロ仕様の楽譜作成ソフトウェアでは、それぞれの記譜要素は多様なフォントから選択することができます。


Finaleの場合、音楽フォントは「書類メニュー>記譜用フォントの指定」から設定し、その他のフォントの多くは「ファイル別オプション>フォント」で設定可能で、個別のテキストについては多くの場合、ダブルクリックすれば編集画面を経てフォント設定画面に行き着くことができました。


Doricoの場合、音楽フォントは「ライブラリーメニュー>音楽フォント」から設定します。その他のフォントはFinaleのようにダブルクリックで個別設定が可能なものもありますが、基本的にはライブラリーメニュー内の、「フォントスタイル」「パラグラフスタイル」「文字スタイル」という三つのダイアログで設定することになります。


今回の記事では、Doricoにおけるこれらのダイアログの違いや使い分けについて整理してみたいと思います。


【目次】


フォントに関するメニュー(※ショートカットは環境設定にてユーザー登録しています)
フォントに関するメニュー(※ショートカットは環境設定にてユーザー登録しています)

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ーーーーー


​​1.音楽フォント


音楽フォント(Music Font)は音部記号や臨時記号といったグリフのグループを指し、Finale日本語版ではこれは記譜用フォントと呼ばれていました。


例えばFinale英語版はFinale Maestro、Finale日本語版はKousaku、DoricoはBuravuraが初期設定での音楽フォントで、Doricoではライブラリー・メニューの一番上にある「音楽フォント」から、そのプロジェクトで使用する音楽フォントを選択することができます。


この音楽フォントの詳細については、別記事「国内出版譜向けの音楽フォントChaconne EXと、現在流通する主なSMuFLフォントの比較」をご覧下さい。


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2.フォントスタイル・ダイアログ


フォントスタイル・ダイアログは、「ライブラリーメニュー>フォントスタイル」から開くことができます。

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Doricoユーザーマニュアルでは、「フォントスタイルを編集 (Edit Font Styles)」ダイアログに関して以下のような説明があります。


「フォントスタイルを編集 (Edit Font Styles)」ダイアログでは、演奏技法、強弱記号、テンポ記号のフォントサイズなど、テキストエディターで編集できないアイテムに使用されているフォントの形式設定を編集できます。」


フォントスタイル・ダイアログは、Finaleで言うところの「ファイル別オプション>フォント」に最も近いかも知れません。そこで設定できる項目とそのフォント設定は以下の通りです。(音楽フォントには薄い赤、Boldには黄色、Italicにはの網掛けを施しています。)



フォント

サイズ(pt)

スタイル

Chord Diagram Fingering Font

Academico

8.0

Regular

オッシアの譜表ラベル

Academico

7.0

Regular

ギターテクニックのフォント

Academico

7.0

Bold

ギターベンドの音程のフォント

Academico

7.0

Regular

グリッサンドラインテキスト用フォント

Academico

8.0

Italic

コードダイアグラムのフレット番号のフォント

Academico

8.0

Regular

コードダイアグラムの水平フレット番号のフォント

Academico

6.0

Regular

コード記号とオンコードの区切り用文字フォント

Academico

10.0

Italic

コード記号のフォント

Academico

11.0

Regular

コード記号の音楽テキスト用フォント

Bravura Text

11.0

Regular

タイムコード用フォント

Academico

6.0

Regular

タブ譜の数字用フォント

Lato

8.0

Bold

デフォルトのテキスト用フォント

Academico

10.0

Regular

デフォルトの音楽テキスト用フォント

Bravura Text

10.0

Regular

デフォルトの音楽フォント

Bravura

20.0

Regular

トリル音程フォント

Academico

8.0

Regular

フィンガリング用イタリックテキストフォント

Academico

8.0

Italic

フィンガリング用テキストフォント

Academico

8.0

Regular

フィンガリング用フォント

Bravura

20.0

Regular

ペダル線のフォント

Academico

10.0

Regular

ページ番号用フォント

Academico

8.0

Bold

ホルンのアルト支管のフィンガリングのテキストフォント

Academico

7.0

Italic

ホルンの支管のフィンガリングのテキストフォント

Academico

7.0

Regular

ホルンの支管のフィンガリングの臨時記号のフォント

Bravura

7.0

Regular

マーカーのタイムコード用フォント

Academico

8.0

Regular

マーカーテキスト用フォント

Academico

10.0

Regular

リピート括弧のフォント

Academico

10.0

Regular

印刷メタデータ用フォント

Academico

8.0

Regular

印刷透かし用フォント

Source Sans Pro

192.0

Regular

垂直線のフォント

Academico

9.0

Regular

小節リピート記号のカウント

Academico

11.0

Regular

強弱に関する音楽テキスト用フォント

Bravura

20.0

Regular

強弱テキスト用フォント

Academico

10.0

Italic

拍子記号用フォント

Bravura

20.0

Regular

拍子記号用プレーンフォント

Academico

14.0

Bold

拍子記号用区切り文字のプレーンフォント

Academico

24.0

Regular

数字付き低音のテキストフォント

Academico

8.0

Regular

数字付き低音のフォント

Bravura

20.0

Regular

横棒線のフォント

Academico

9.0

Regular

演奏技法用フォント

Academico

11.0

Regular

連符のプレーンフォント

Academico

11.0

Italic

連符用フォント

Bravura

20.0

Regular

長休符のタチェット用フォント

Academico

11.0

Bold

長休符の小節数用フォント

Bravura

20.0

Regular

長休符の小節数用プレーンフォント

Academico

14.0

Bold


フォントスタイル・ダイアログでの設定項目は、Doricoのバージョンによっては後述するパラグラフスタイル・ダイアログに所属している場合がありますのでご注意下さい。


例えば曲頭に書かれることが多い「Allegro ♩=140」といったテンポ表記は、Dorico Pro 5から6で以下のような仕様変更が加えられています。※


【Dorico Pro 5】

  • Allegro:フォントスタイル>即時テンポテキスト用フォント

  • ♩:フォントスタイル>メトロノーム音楽テキスト用フォント

  • =140:フォントスタイル>メトロノームテキスト用フォント


【Dorico Pro 6】

  • Allegro:パラグラフスタイル>テンポ(即時)

  • ♩=140:パラグラフスタイル>テンポ(メトロノームマーク)


※ユーザーマニュアルにも、「特定のフォントスタイルが見つからない場合は、パラグラフスタイルである可能性があります」との記述があります。


なお、Finaleの場合、「ファイル別オプション>フォント」にて、音楽フォントをKousakuに設定した状態で例えば休符だけChaconneを用いるといったことが可能でした。Doricoの場合、それは「ライブラリーメニュー>音楽記号」にて設定できます。


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3.パラグラフスタイル・ダイアログ


パラグラフスタイル・ダイアログは、「ライブラリーメニュー>パラグラフスタイル」から開くことができます。

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Doricoユーザーマニュアルでは、パラグラフスタイル (Paragraph Styles)」ダイアログに関して以下のような説明があります。


「パラグラフスタイル (Paragraph Styles)」ダイアログでは、テキストの既存のパラグラフスタイルを変更したり、新しいスタイルを作成したりできます。パラグラフスタイルは、テキストエディターで選択することで、テキストフレーム内の個々のパラグラフや個別のテキストアイテム内のすべてのテキストに対して、あとから適用できます。


フォントスタイル・ダイアログが譜表上に配置される要素を主な対象とするのに対して、パラグラフスタイル・ダイアログはテキストフレーム(テキストボックス)などで独立して配置する要素を主な対象としているように見受けられます。(Boldには黄色、Italicにはの網掛けを施しています。)


フォント

サイズ

スタイル

インストゥルメントの変更ラベル

Academico

12.0

Regular

インストゥルメントの変更通知

Academico

12.0

Regular

キューラベル

Academico

8.0

Regular

ギャレービューの余白ラベル

Source Sans Pro

8.0

Regular

タイトル

Academico

20.0

Regular

タチェット

Academico

16.0

Regular

テンポ(メトロノームマーク)

Academico

9.0

Regular

テンポ(即時)

Academico

11.0

Bold

テンポ(段階的)

Academico

11.0

Bold

デフォルトのテキスト

Academico

12.0

Regular

ハープペダルセッティング

Academico

11.0

Regular

フロータイトル

Academico

16.0

Regular

プレーヤーグループのラベル

Academico

10.0

Regular

プレーヤーラベル

Academico

8.0

Regular

ヘッダー

Academico

10.0

Regular

ページ番号

Academico

10.0

Regular

リハーサルマーク

Academico

14.0

Bold

リピートマーカージャンプ

Academico

11.0

Bold

リピートマーカーセクション

Academico

11.0

Bold

リピート回数

Academico

11.0

Bold

レイアウト名

Academico

14.0

Regular

作曲者

Academico

10.0

Regular

作詞者

Academico

10.0

Regular

小節番号(スコア)

Academico

9.0

Italic

小節番号(パート)

Academico

9.0

Italic

打楽器のレジェンド

Academico

8.0

Regular

数字付き低音タストソロ

Academico

8.0

Regular

歌詞

Academico

11.0

Regular

歌詞(コーラス)

Academico

11.0

Italic

歌詞(コーラス翻訳)

Academico

11.0

Italic

歌詞(歌詞番号)

Academico

11.0

Regular

歌詞(翻誤)

Academico

11.0

Italic

著作権

Academico

8.0

Regular

譜表ラベル

Academico

10.0

Regular

譜表ラベル (内)

Academico

10.0

Regular

譜表ラベル (打楽器グリッド)

Academico

8.0

Regular

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4.文字スタイル


文字スタイル・ダイアログは、「ライブラリーメニュー>文字スタイル」から開くことができます。

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Doricoユーザーマニュアルでは、「文字スタイル (Character Styles)」ダイアログに関して以下のような説明があります。


「文字スタイル (Character Styles)」ダイアログでは、文字スタイルを変更したり新しいスタイルを作成したりできます。そのあと、テキストエディターでその文字スタイルを選択することで、プロジェクト内のさまざまな場所にある個々の文字や単語にそのスタイルを適用できます。


文字スタイル・ダイアログは、そこで特定の楽譜要素のフォントを設定するというよりも、フォントを何らかの状態に設定したスタイルを登録しておいて、そこから選択することでそのスタイルを簡単に設定するといった使い方をするようです。


ーーーーー


Doricoファミリー製品で優れた点は、廉価版であるDorico Elementsでも、上記で紹介した4つのダイアログについてはProと同じ機能のものが搭載されていることです。※


思えばFinaleファミリー製品の場合、廉価版のPrintMusicではフォント選択に殆ど自由度がありませんでした。これは、初めて購入する楽譜作成ソフトウェアとしてDorico Elementsがお勧めな理由の一つと言えます。


※無料版のDorico SEではさすがにフォント/パラグラフ/文字スタイルの3つのダイアログはありませんが、それでも音楽フォントだけはProと同じダイアログが搭載されています。


廉価版ElementsもProと同様、フォントに関する4つのダイアログを搭載し、フォント設定の可能性は広い
廉価版ElementsもProと同様、フォントに関する4つのダイアログを搭載し、フォント設定の可能性は広い

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【お知らせ】

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2025/8/26更新:Finaleからの乗り換えを支援するSibelius集中講座(2025年9月開講コース)の受講お申し込み受付中。詳細はこちらのページをご覧下さい。

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