手元のFinaleをなるべく長持ちさせるために:Finale日本語版サポートの完全終了を受けて
- tarokoike

- 4月28日
- 読了時間: 13分
更新日:10月6日

2024年8月末に開発元のMakeMusic社より開発および販売の終了が告知されたFinaleですが、英語版については、ライセンス認証は当面継続するものの、2025年8月25日をもってテクニカル・サポートが終了となることが、既に昨年8月末の時点で「Finale Sunset FAQ」にてアナウンスされていました。
そして問題のFinale日本語版については、2025年8月26日の昼に国内代理店より「FinaleおよびPrintMusic日本語版サポート終了に関するご案内」が公開され、同年春のテクニカル・サポート終了後も続けられていた以下を含む全てのサポートが、遂に完全終了となりました。
ライセンス認証/認証解除
オンラインユーザーマニュアルの提供
Finale関連製品の登録
インストーラー、アップデーター、日本語マニュアルのダウンロード
FAQの掲載
上記に関連するすべてのサポート
このため基本的にはSibeliusやDoricoといった他のプロ向け製品への乗り換えを引き続きお勧めいたしますが、MusicXMLを介したファイル移行は時として簡単でない場合があるため、ユーザーとしてはFinaleを出来る限り長く使用可能な状態に温存しておきたいところでしょう。
この記事では、オリジナルの英語版とは若干異なる仕様を持つFinale日本語版の事情に即して、テクニカル・サポートの観点からその長期的な温存にあたっての留意点をまとめておこうと思います。
【目次】
1.OSをアップデートさせない
最も重要な注意事項は「Finaleを温存させたいパソコンを現状維持し、OSをアップデートさせない」ことです。
Finaleを温存させたいパソコン(以下「Finale専用パソコン」)は、当然ながらそのバージョンのFinaleの動作環境を満たす必要があり、新しいバージョンのOSが提供されている時は、不用意にOSをアップデートしないことが非常に重要です。
特にMacについては、使用していたアプリケーションがmacOSのアップデートにより動作不良を起こす場合がWindowsに比べて多くありますので、Finaleに限らず、一般に不必要なmacOSのアップデートは避けるのが無難です。※
※アプリケーションの開発や保守には、莫大なお金が掛かります。そのため開発者にとっては、毎年のように発表されるmacOSの新バージョンへの対応は頭痛の種の一つです。このあたりの事情は以下の記事に詳述しています。
▼【macOS】アプリケーション開発とOS対応
Macでは、最終バージョンとなったFinale v27は今のところ動作環境外とされるmacOS 15 Sequoir以降でも致命的な問題なしに動作しているようですが、今後のmacOSアップデートでどうなるかは分かりません。
▼macOS Sequoia Compatability Thread (Real world experiences only)
▼Mac OS Tahoe and Finale
Macを1台しか持っておらず、他のアプリケーションとの兼ね合いなどでどうしてもそのmacOSをアップデートさせる必要がある場合、Finale v27の動作環境を満たすmacOSを搭載したFinale専用のMacを中古市場で探すといったことも必要になるかもしれません。
Windowsの場合はこれまでの経験上、Macに比べてアプリケーションが新OSに非対応になるケースは少なく、将来的にWindows 12などが公開されても、おそらくFinale v27はそこで動作するのではないかと推測します。
しかし、いずれにせよFinaleを確実に温存したい場合は、MacとWindowsのいずれにおいても、動作環境を満たすOSを維持することが重要です。
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2.Finale専用パソコンはインターネットに接続させない
前述の「OSをアップデートさせない」というのは、Windows 10→11といったメジャー・アップデートだけではなく、定期的に提供されるWindows Updateのようなマイナー・アップデートも含むことにご注意下さい。
一般にパソコンのOSは、ユーザーがこれをアップデートさせるか否かを選択できる余地がありますが、パソコンをインターネットに接続している限り細かなアップデートが随時、自動的に適用される場合があり、上記のWindows Updateはその一例です。
Finaleは開発が終了となったため、Windows Updateを含めた今後提供される新しいOS上で発生し得るいかなるトラブルに対しても、その修正版は提供されないことには留意する必要があります。※
Finale専用パソコンはWindows Updateのような自動アップデートが適用されないように、MacとWindowsいずれにおいても、インターネットに接続しない環境で運用することが無難です。
※Finaleはライセンス認証を解除した状態でも使用可能ですが、その状態ではファイルの保存と印刷ができません。なので、Finale専用パソコンではライセンス認証された状態を保持する必要があります。
基本的にはユーザーが自身でそのように操作しない限り、Finaleのライセンス認証が勝手に解除されることはありません。しかし、特にFinale v25とv26のWindows版において、稀にライセンス認証が不意に解除されてしまうトラブルがありました。
これには、パソコンの起動や終了時に自動的に実行されるWindows Update(Windows更新プログラムのインストール)が原因の一つと考えられています。
もし2025年8月26日以降に現在使用中のFinale日本語版でライセンス認証が不意に解除されてしまった場合、再びライセンス認証を行う術はありません。
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3.Finaleのインストーラー等を入手しておく
【注意】本章「3.Finaleのインストーラー等を入手しておく」の内容は、Finale日本語版インストーラーの提供が終了となる2025年8月26日以降は無効となりますが、ご参考までにそのまま残しておきます。
温存中のFinaleがトラブルに見舞われてクリーン・インストールが必要となった場合に備え、Finaleのインストーラーを入手しておくことを強くお勧めいたします。
これは株式会社ジェネレックジャパンへの製品登録があるFinale日本語版の正規ユーザーであれば、2025年8月25日までは同社のマイページにログインの上、「所有製品 / 製品登録」のページからダウンロードできます。
▼株式会社ジェネレックジャパン・MUSIC EcoSystemsマイページへのログイン
Finale v27のインストーラーは3.5GBほどのサイズですが、これは外付けのストレージにコピーしたりディスクに焼くなどして、邪魔にならない場所に永久保存すると良いでしょう。
「あなたへのおすすめ」欄には、インストーラー以外の付属物のダウンロードリンクがありますが、この中から「Finale 2x オフライン用ユーザー・マニュアル」をダウンロードしておくことをお勧めいたします。
Finaleのユーザーマニュアルはインターネット上で閲覧できますが、これはそれと同じものをローカル環境向けに再現したもので、入手しておくとインターネットに接続していない環境でもユーザーマニュアルを閲覧することができます。
オフライン用ユーザー・マニュアルはこれまでFinale v25以降のバージョンで提供されており、v27用とv26用は共通で、ファイル・サイズは2.2GBほどあります。
アップデータについては、現在ダウンロードできるFinaleインストーラーはいずれも各バージョンの最終版(つまりv27であればv27.4)のため、アップデータの入手は基本的に不要ですが、これは300MB程度の小さなファイルなので、保存スペースを確保できるのであれば入手しておいても良いかも知れません。
なお、Finale日本語版アップデータをFinale英語版に適用することは出来ませんのでご注意ください。(日英のファイルが混ざることによるトラブルの原因になります。)
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4.Finale英語版も使用可能な状態にしておく
前述の通り、Finale日本語版のライセンス認証/認証解除は2025年8月25日を以て終了が決定しました。これにより8月26日以降は、既に行ったライセンス認証の解除、および新規インストール後のライセンス認証ができなくなり、従って、これまで可能であった新しいパソコン購入後の乗り換えもできなくなります。※
※Finaleは、ライセンス認証を行わない場合はいわゆる無料体験版として機能し、新規インストール後30日間はフル機能が使えますが、その後は印刷と保存(MusicXMLなどのエクスポートも含む)ができなくなります。Finaleのインストール後30日以上経過したパソコンにてそのライセンス認証を解除すると、印刷と保存は即座にできなくなります。
従って、2025年8月26日以降であっても、Finale v27の動作環境を満たす新しいパソコンを入手してFinale v27日本語版を新規インストールし、30日以内に手持ちのFinaleファイルを全てMusicXMLでエクスポートしておけば、それらはSibeliusやDoricoなど他ソフトウェアに引き継ぐことができます。
これは将来的にMakeMusic社によるFinale英語版のライセンス認証サービスが終了した後のFinale英語版についても同様です。
なお、MusicXMLでのエクスポートでは他ソフトウェアにインポートした際に完全な再現性は期待できませんので、重要なファイルについては元データの細部を確認できるPDFファイルもエクスポートしておくことを強くお勧めします。詳細は以下の記事をご覧下さい。
▼複数のFinaleファイルをPDFに一括変換する方法
このため、8月26日以降に新たなパソコンを購入するなどでFinaleを新規でライセンス認証したい場合は、日本語版ではなく、Doricoクロスグレード版を購入の上、MakeMusic社からFinale最終バージョンであるv27英語版の提供を受けてこれを用いることが唯一の方法となります。※
※Doricoクロスグレード版は現時点では¥20,900のセール価格が適用されており、これはFinale v27日本語版のユーザーだけでなく、v26以前のFinaleのユーザーや、さらにPrintMusicのユーザーも購入可能です。なお、このセールはいつまで継続されるかは不明のため、なるべく早めのご購入をお勧めいたします。
Finaleは単一言語アプリで、基本的に言語の切り替えはできず、従ってFinale英語版のユーザー・インターフェースを日本語にすることはできません。
そのため「Finale v27の日本語版を入手したい」という声も聞かれますが、以前の記事にも詳述した通り、Finaleはオリジナルである英語版が最も多くのテストが重ねられているためローカライズ版である日本語版よりも信頼性が高く、この機会にFinale英語版を入手できるのは幸運という考え方もあります。
Finale英語版のユーザー・インターフェースは、メニューの順序が多少違うなどを除けば日本語版と殆ど変わらないので、日本語版を使い込んだ人であれば、たとえ英語が苦手であっても、すぐその使用に慣れることができると思います。
バージョン違いのFinaleはプログラム上は別製品であり、同じ環境で同時に起動して使用できますので、v26以前の日本語版を裏で常に起動しておけば、v27英語版で意味が分からない言葉に遭遇した場合、すぐに調べることもできます。
Finale英語版を使用する際の唯一の問題点は、Finale英語版にはFinale日本語版の記譜用フォントKousakuが使用可能な設定がなされていないために、Finale日本語版で作成したファイルを開いた際に文字化けが生じる可能性があることですが、この問題の回避方法は以下の記事でご紹介しています。
▼Finale 27.4のアップデート内容と、Finale日本語版で作成したファイルを英語版で扱う方法(文字化け対策を含む)
Finale英語版は開発元MakeMusic社の直轄バージョンのため、信頼性が高いだけでなく、おそらくライセンス認証サービスが将来に向けて最も長期に亘り提供され、従ってFinaleで最も長寿命な言語バージョンになると思います。※
※Finale開発元のMakeMusic社の「Finale Sunset FAQ」によると、当初は2025年8月25日としていたFinale英語版のライセンス認証サービスの提供期限は、その後のユーザーの反応により無期限で延期され、現在は「Finaleのライセンス認証は当面の間は継続する(Finale authorization will remain active for the foreseeable future)」とされています。
しかし、これは"remain active permanently"(永続的に有効)という表現ではない点が要注意で、MakeMusic社の都合で突然にライセンス認証が無効になる可能性があることには備えておく必要があります。
また、Finaleは開発終了によりOSの新バージョンへの対応は行われませんので、Finale v27英語版については「ライセンス認証が出来たけど正常動作しない(動作環境を満たすOS環境を維持できなくなった)」という終わり方となる可能性もあることにご留意下さい。
余談ですが、旧バージョンのFinaleでは、特定のOSにおいて日本語版をライセンス認証すれば同じバージョンの英語版もライセンス認証された状態で起動できたことがありました。Finale v27の場合も特定のOSバージョンにおいて英語版をライセンス認証した環境でFinale v27日本語版もライセンス認証した状態で起動できる可能性はゼロではないかも知れませんが、仮にそうなったとしてもそれは想定外の動作のため、そのまま使わない方が無難です。(もし使用中にライセンス認証が不意に解除された場合、そこまでの作業を保存する術はありません。)
仮にもし今後、何らかの方法でFinale v27日本語版を入手できたとしても、2025年8月26日以降にはその新たなライセンス認証ができなくなるため、Finale v27日本語版はインストール及びライセンス認証したパソコンが壊れた時点で完全に寿命を迎えることとなります。
従って、もし可能であれば、セールが行われているうちにDoricoクロスグレード版を購入の上、Finale v27英語版を入手し、日本語版だけではなく英語版のFinaleも温存しておくことを、非常に強くお勧めいたします。
なお、Finale v27日本語版が正常動作している限りはFinale v27英語版は不要で、Finale v27英語版が活躍するのは、新たにFinale v27が動作するパソコンを入手し、改めてFinale v27をインストールしてライセンス認証する必要が生じた時です。
同じバージョンのFinale、例えばFinale v27英語版とFinale v27日本語版は基本的に同じOS環境で共存できないため、むしろインストールすべきではないことにご注意下さい。※
※appの名称やApplication Supportフォルダ内の該当フォルダの名称を手作業で変更すれば共存は可能です。この作業は多少高度なパソコン操作スキルを要しますが、詳細はこちらの記事で紹介しています。
もし既にFinale v27日本語版をお持ちの場合は、MakeMusic社のMy Account: My SoftwareページにFinale v27英語版が製品登録されたことが確認できた後は、現時点でそのインストーラーをダウンロードする必要はなく、本当に必要となる日が来るまでは、とりあえずは何もせず放置で良いかと思います。
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5.温存中のFinaleにトラブルが発生した場合は
今後、温存中のFinaleにトラブルが発生した場合は、弊社でも過去にFinaleテクニカル・サポートを担って来た経験に基づき、これと同じ技術水準のサポートを日本語版・英語版の双方に対してご提供可能です。
しかし、Finaleの開発元や代理店とは関係のない独立した事業体である弊社がご提供できるサポートは有料であり、また恐れ入りますが、これは全ての問題に対する解決をお約束するものではありません。
問題に直面した場合は、まずはセオリーに従い、最初は初期設定ファイルの削除、次にクリーン・インストールにて自力解決を試みて頂くことをお勧めいたします。
▼汎用的なトラブル解決手段:初期設定ファイルの削除(再構築)
▼汎用的なトラブル解決手段:再インストール
ーーー
【2025/7/28追記】
Finale日本語版ユーザーにとって若干の朗報は、開発元MakeMusic社が直接管理しているFinale英語版のFAQ記事、ユーザーマニュアル、コミュニティ・フォーラムは、2025年8月25日のテクニカル・サポート終了後も引き続き提供されることです。
"Finale help center articles, user manuals, and the community forum will remain available." ※
※2025/7/25のMakeMusic社メール「Reminder: Technical Support for Finale v27 ends soon」より。ただしこれは2025年7月25日時点での情報であり、今後MakeMusic社の方針で変更される可能性があります。
もちろんその内容は英語ですが、最近はインターネット上での自動翻訳機能はかなり精度が向上していますので、もし英語が苦手であっても利用には殆ど不便はないと思います。
そもそもFinaleのユーザーマニュアルはオリジナルの英語版を日本語訳したものであり、またFAQ記事も日本語記事の多くはFinale開発元MakeMusic社の英語記事を日本語訳したもので、全体としてMakeMusic社のコンテンツの方が情報量は多いです。
コミュニティ・フォーラムは今まで日本では紹介されて来ませんでしたが、ここでのユーザー同士のやり取りの中からは、Finaleの使い方からトラブルシューティングまで、多くの貴重な情報を得ることができるかと思います。
なので、困った場合は、まずはこれらをチェックすることをお勧めいたします。
▼Finale Knowledge Base(英語版FAQ記事)
▼Community Forum(Finaleユーザーのフォーラム)
▼User Manuals(各バージョンの英語版ユーザーマニュアルへのリンク集)
【2025/8/18追記】
テクニカル・サポートが終了する2025年8月26日以降のFinale英語版の扱いについては、MakeMusic社公式ブログの以下の記事に情報があります。
▼What Happens After Finale Technical Support Ends?
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