FinaleからDoricoにMusicXMLでファイルを移行させた際のページレイアウト崩れの修正方法
- tarokoike
- 4月25日
- 読了時間: 4分
更新日:4月28日
2024年夏のFinale日没問題の発生時点から話題として取り上げて来た、FinaleからDoricoへのMusicXMLファイルのインポート時のレイアウト崩れの件ですが、このたびその修正作業の一連の手順を整理し、6分間ほどの動画にまとめてみました。※
※この動画は元々、弊社が開講する「Dorico集中講座」の教材の一つとして用意して来たものですが、レイアウト崩れの修正が難しいというお声が少なからず聞かれるため、一般公開することにいたしました。なお、Dorico側の「環境設定>MusicXML Import」は初期設定状態です。
残念なことに、Dorico上でひとたび崩れてしまったレイアウトを修正するのは、あまり簡単な作業ではありません。
しかし、DoricoにおけるMusicXMLファイルのインポート後のレイアウト崩れの原因と対策には、おおよそのパターンがあるような気がします。
これは2024年10月10日記事「Dorico 5.1.60は、MusicXMLインポート時のレイアウト崩れを改善するか」で述べた通り、上下方向のスペース不足が原因で発生する場合が多いと考えられるため、上下方向のスペース確保のために障害となる要素を一つひとつ取り除くというのが基本的な発想となるかと思います。
そのように考えると、一見混沌として手の付けようがないと思えるようなレイアウト崩れの中でも、見るべきポイントが見えてきます。
具体的には、例えば以下の5項目がそれに相当します。
(1)ページ余白を減らす(00:56)
楽譜作成ソフトウェアであればFinaleでもDoricoでもSibeliusでも共通の発想として、「レイアウトは、まずは外側から固めていく」というものがあります。
Finaleに比べると、Doricoの楽譜エリア(Dorico用語で言う「楽曲フレーム」)は、初期設定では若干狭い設定なので、これを広げることが修正に向けた第一歩です。
(2)フロー見出しを「常になし」に設定(01:21)
Doricoでは製品仕様上、MusicXMLインポート時にFinaleのスコア・マネージャーに入力していた曲タイトルが「フロー名」というDorico独特の要素に変換された上に、これが強制表示されてしまいます。
通常、1ページ目は曲タイトルなどを含むため、ただでさえ狭くなりがちですが、フロー見出しはこの1ページ目の貴重なスペースを消費してしまうため、フローを使用しない楽譜においては、MusicXMLのインポート後に毎回、手作業でこれを非表示にする必要があります。
(3)コード記号を「組段の一番上の譜表の上」に設定(01:46)
(4)空白の譜表を非表示(02:09)
この3と4については記譜上は全く別の要素なのですが、Finale上で本来非表示にしたものがMusicXMLインポート時にDorico上で強制的に再表示される点が両者に共通しています。
これは現時点ではDoricoがMusicXMLファイルを扱う際の仕様のようで、このために非表示設定の多いFinaleファイルほど、移行時のレイアウト崩れが大きくなってしまう恐れがあります。
しかし原因が分かってしまえば対処も簡単で、これらを単にDorico上で非表示に戻すだけで、レイアウト崩れは大きく改善されます。
(5)「最適間隔」にて譜表の上下スペーシングを設定(02:38)
この機能は少々曲者で、上下方向にある程度のスペースがないと期待通りに動いてくれないことがしばしばあります。
今まで上手く動かなかったのが五線サイズを小さくすると動くようになるといった挙動から察するに、おそらくそのページのフレーム使用率が、この機能の動作に影響していると思われます。
なので、この設定は上記(1)〜(4)で可能な限り上下方向のスペーシングを確保した上で、最後に行うのが良さそうです。
とにかく、譜面の密度を一定以下に保ち、Doricoの自動調整機能が働くための余地を残してやるというのが、Doricoのレイアウト機能を使いこなすコツのようです。
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Doricoは製品仕様上、現時点では他ソフトウェアに比べるとFinaleからのファイル移行時にレイアウト崩れの問題が発生し易いようですが、ひとたび移行が無事完了すれば、そのFinale並みの浄書機能、およびDAW並みのプレイバック機能で、Finaleを超える素晴らしい働きをしてくれるのではないかと、個人的には大きな期待を寄せているところです。
もしレイアウト崩れの問題を解決できず、せっかく買ったDoricoを「お蔵入り」にして現在もFinaleを使い続けている、という方がいらっしゃれば、本記事が何らかのご参考となれば幸いです。